2019年7月15日月曜日

グランドスタッフ

ある人から「空港の地上職のことを何でグランドスタッフっていうんだろうね?」と言われ、確かに何でだろうと思った。

ググってみると、空港の地上職のことは英語ではground staffもしくはground-crewというらしい。なので、グランドスタッフのグランドはgroundを表していることになる。groundならグラウンドだろう。グランドは普通grandを指す。グランドスタッフではgrand staff「偉大なスタッフ」みたいではないか。

流れとしては、グラウンドスタッフというべきものが、訛ってグランドスタッフになってしまったのだろう。それにしてもよくわからないのは、①英語に堪能な人間が多いはずの航空業界でこんな言い方が許容されてきたこと、②日本語の外来語であまり例が見られない/aʊ/:/a/の対応が見られることである。

①に関しては、むしろグランドスタッフ以外の場面ではgorundがグラウンドと規則的に対応しているのが興味深い。学校の校庭はグラウンドであって、グランドではない。とはいえ、これは自分の直感でしかないらしい。Googleで検索してみると、"グランドスタッフ"77万件に対して、"グラウンドスタッフ"18万5000件であり、後者もそれなりに市民権を獲得している。それに対して、"学校のグラウンドで"9万8700件に対して、"学校のグランドで"17万6000件であり、むしろ「グランド」の方が多数派という結果が出た。要するに、単語によって差はあるのもの、日本語においてgroundが「グラウンド」と「グランド」の間で揺れている、というのが現状のようである。(「で」を入れたのは、入れないと「小学校のグランドデザイン」のような用例がひっかかってしまうからである。)

②に関しては、/eɪ/ > /e/のような変化はよく見られる気がする。ぱっと思いつくだけでapron/éɪprən/:エプロン、waist/weɪst/:ウエスト、などがある。探せばもっと多いだろう。ただ、[eɪ]は日本語の音韻体系の中では/e:/の異音に過ぎず、/e/とは長短のみで区別される。日本語の外来語では長音の短音化には比較的寛容(コンピューター>コンピュータ、ホメーロス>ホメロス、など)なので、こちらはまだ納得がしやすい。そう考えると、/aʊ/:/a/の対応はやはり異質である。

日本語の外来語には、message/mésɪdʒ/:メッセージ(メッシジではなく)、sausage/sˈɔːsɪdʒ/:ソーセージ(ソーシジではなく)、 canal/kənˈæl/:キャナル(カナルではなく)のように、元の英語の発音を誤認したまま日本語の音韻に対応させたとみられるものが存在する。これは、日本語の音韻に合わせることで起こった英語との発音のズレや、綴り字を直接写してことでできた外来語とは性質の異なるものなので、注意が必要である。

0 件のコメント:

コメントを投稿

「의붓-」の意味の変化

韓国語では、<再婚相手の連れ子>のことを의붓아들、의붓딸という、ということを最近知った。面白いことに、男性側の連れ子でも女性側の連れ子でも「의붓-」を使うらしい。この「의붓-」は実はかなりの曲者で、上のような子供を表す語彙だけではなく、両親を表す語彙、果ては兄弟を表す語彙にまでつ...